更新日:2025/06/04
食品を含めた物価の高騰などから、食を取り巻くニュースについての話題が増えつつある昨今。当然、食べ物の安全についての注目度も上がっています。今回はそんな食の安全に関わる、有機農業についてのお話です。
日本では作物を作るときに使用できる農薬の種類・量が決められています。人体や環境への影響を限りなく少なくできるよう、安全性に関する審査の充実化も進められています。そのため、国産の野菜や果物は、農薬を使用していても安全性が認められたものが流通しています。また、無農薬で栽培された作物も出回っているので、気になる場合はそちらを選ぶ選択肢もあります。そんなときに気になるのが、「無農薬」「有機野菜」の表記です。どちらも一見すると同じような意味に見えますが、では、有機農業とはどんなものでしょう?
日本では「有機野菜」を作る有機農業には厳格な複数の決まりがあり、その認証をクリアした場合に「有機JAS認証」を取得できます。現行法では、有機JAS認証を取得していない農作物は、「有機野菜」「オーガニック」などの名称で販売することはできません。有機JAS認証基準の項目はたくさんありますが、特に大きなものでは以下の2点が挙げられます。
ここから考えると、無農薬であることはもちろん、畑の環境そのものの質が問われるのが有機農業だと言えるでしょう。安全な農作物を生産するのはもちろん、環境への負担を軽減することも、有機農法が担う大事な役割です。
そんな有機農業の取り組みの拡大化は日本でも年々進んでおり、農林水産省では、「みどりの食料システム戦略」において、2040年までには次世代有機農業技術の確立を、2050年までには有機農業の面積の割合を100万haに拡大することを目標として掲げています。
有機農法は環境に配慮し、安全な農作物を栽培することができるのですが、国内すべての農作物を有機農法でまかなうのは難しい側面もあります。例えば、有機農法では慣行農法(※農薬・化学肥料を標準的に使用した一般的な農法のこと)のように、農薬や肥料で野菜の栽培環境を整えることができないので、収穫量が落ちたり、農作物の品質の一定化が難しくなる、管理コストが増えるなどがあります。その分、慣行農法の農作物よりも販売価格が高くなりがちです。また、有機農法の有機JAS認証には畑を2年以上有機的管理する必要がありますが、管理期間中にその畑の作物を販売するときには有機JAS認証をつけることはできません。(※有機的管理2年目に入ってからは「転換期間中」と記載されたJASマークをつけることができます)そのため、販売にあたっての制限が大きくなるなど、慣行農法から有機農法への転換を行う生産者への負担が重くなることへの問題点も懸念されています。有機農法を推進するには、消費者・生産者・地域・行政のすべてに影響があるので、すぐに数を増やせるものではないのですね。
有機農法は食の安全・環境への配慮に貢献する取り組みですが、すべての農作物を有機農法だけで生産するのはまだまだ難しい問題が多くあるのも事実です。2040年に達成目標としている次世代有機農業技術の確立など、今後も大きく情勢が動く可能性の高い分野なので、ぜひ注目していきたいですね。
Text by はむこ/食育インストラクター
食品を含めた物価の高騰などから、食を取り巻くニュースについての話題が増えつつある昨今。
当然、食べ物の安全についての注目度も上がっています。
今回はそんな食の安全に関わる、有機農業についてのお話です。
【有機農業は何がすごいのか】
日本では作物を作るときに使用できる農薬の種類・量が決められています。
人体や環境への影響を限りなく少なくできるよう、安全性に関する審査の充実化も進められています。
そのため、国産の野菜や果物は、農薬を使用していても安全性が認められたものが流通しています。
また、無農薬で栽培された作物も出回っているので、気になる場合はそちらを選ぶ選択肢もあります。
そんなときに気になるのが、「無農薬」「有機野菜」の表記です。
どちらも一見すると同じような意味に見えますが、では、有機農業とはどんなものでしょう?
日本では「有機野菜」を作る有機農業には厳格な複数の決まりがあり、その認証をクリアした場合に「有機JAS認証」を取得できます。
現行法では、有機JAS認証を取得していない農作物は、「有機野菜」「オーガニック」などの名称で販売することはできません。
有機JAS認証基準の項目はたくさんありますが、特に大きなものでは以下の2点が挙げられます。
ここから考えると、無農薬であることはもちろん、畑の環境そのものの質が問われるのが有機農業だと言えるでしょう。
安全な農作物を生産するのはもちろん、環境への負担を軽減することも、有機農法が担う大事な役割です。
そんな有機農業の取り組みの拡大化は日本でも年々進んでおり、農林水産省では、「みどりの食料システム戦略」において、2040年までには次世代有機農業技術の確立を、2050年までには有機農業の面積の割合を100万haに拡大することを目標として掲げています。
【デメリットもある?】
有機農法は環境に配慮し、安全な農作物を栽培することができるのですが、国内すべての農作物を有機農法でまかなうのは難しい側面もあります。
例えば、有機農法では慣行農法(※農薬・化学肥料を標準的に使用した一般的な農法のこと)のように、農薬や肥料で野菜の栽培環境を整えることができないので、収穫量が落ちたり、農作物の品質の一定化が難しくなる、管理コストが増えるなどがあります。
その分、慣行農法の農作物よりも販売価格が高くなりがちです。
また、有機農法の有機JAS認証には畑を2年以上有機的管理する必要がありますが、管理期間中にその畑の作物を販売するときには有機JAS認証をつけることはできません。(※有機的管理2年目に入ってからは「転換期間中」と記載されたJASマークをつけることができます)
そのため、販売にあたっての制限が大きくなるなど、慣行農法から有機農法への転換を行う生産者への負担が重くなることへの問題点も懸念されています。
有機農法を推進するには、消費者・生産者・地域・行政のすべてに影響があるので、すぐに数を増やせるものではないのですね。
有機農法は食の安全・環境への配慮に貢献する取り組みですが、すべての農作物を有機農法だけで生産するのはまだまだ難しい問題が多くあるのも事実です。
2040年に達成目標としている次世代有機農業技術の確立など、今後も大きく情勢が動く可能性の高い分野なので、ぜひ注目していきたいですね。
Text by はむこ/食育インストラクター