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たべて元気♪「食だより」

食材・料理

日本の郷土料理~神奈川県 けんちん汁~

更新日:2022/02/25

各地域に古くから伝わる郷土料理の中から、今回は神奈川県のけんちん汁にスポットを当て、その歴史などを紐解いていきます!
けんちん汁のレシピも併せてご紹介しますので、お楽しみに☆

【郷土料理とは】

郷土料理は風土や気候・産物などに影響を受けて出来た日本各地に伝わる料理の事をいいます。隣接する地域でも知らないような料理がある一方、離れた地域で名前は違っても似たような料理が存在する事もあります。

【神奈川県ってどんなところ】

神奈川県は関東平野の南西部に位置する県で、日本のほぼ中央に位置します。
山や海に囲まれ、昔から要塞としても優れた土地だったため、源頼朝が鎌倉幕府を開いたり、外国との窓口として港を開港するなど、歴史上重要な拠点にもなりました。
人口は約900万人。横浜市・川崎市・相模原市の3つの政令指定都市を抱える大きな県で、県鳥は「カモメ」・県木は「いちょう」・県花は「やまゆり」です。

【けんちん汁の歴史】

けんちん汁は神奈川県鎌倉市にある禅寺・建長寺で作られたのが始まりとされる精進料理で、「建長寺汁」がなまって「けんちん汁」となったとする説が有力です。
建長寺は鎌倉時代に建立された800年近い歴史のある禅寺で、中国から禅の教えを広めるために訪れていた蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)禅師が開山したとされています。
精進料理は殺生や欲を禁じる仏教の考え方を基にしているので、動物由来の食材・匂いの強い食材を使わずに作られます。修行僧たちの食事の中心は野菜や海藻などですが、「他の命をいただく」事に繋がるので、皮なども捨てずに最後まで無駄なく使います。
現在はかつお出汁を使ったり・具に鶏肉などを使うレシピも多くみられますが、本来は干し椎茸や昆布などで取った出汁を使い、野菜をごま油で炒めてから煮る事で皮などのかたい部分であっても美味しく食べられるように工夫されています。この調理法は蘭渓禅師が伝えたといわれています。
また、けんちん汁には手で崩した豆腐が入りますが、これは修行僧が落とした豆腐を蘭渓禅師が洗って汁に入れた「無駄なく使う」事に由来するそうです。

それではレシピのご紹介です。
今回は精進料理として、動物性の食材を使わずに作ってみましょう。

【けんちん汁】

<材料(作りやすい分量:3~4人分)> 調理時間:30分(出汁を取る時間は除く)
【精進出汁】
干ししいたけ(乾燥)・・3~4枚
昆布・・1枚(10cm角)
水・・1600ml

木綿豆腐・・1丁(300g)
こんにゃく・・小1枚(150g)
ごぼう・・1本(200g)
にんじん・・2/3本(100g)
大根・・・1/5本(200g)
小松菜・・1/2束(125g)
ごま油・・大さじ1
塩・・小さじ1
しょうゆ・・大さじ1~

<作り方>

  1. きれいな容器にサッと洗った干ししいたけ・表面をサッとふいた昆布・水を入れ、冷蔵庫でひと晩おくペーパータオルで濾し、しいたけは石突きを取り、4~6等分に切る昆布は食べやすい大きさに切る
  2. 木綿豆腐はペーパータオルで包み、冷蔵庫で精進出汁と同じ時間、水気を切るこんにゃくは叩いてからひと口大にちぎり、熱湯で1分茹でてザルに上げ、水気を切る
  3. ごぼうは皮を包丁の背でこそぎ取り、少し大きめの乱切りにするにんじん・大根は皮がきれいならそのまま少し大きめのひと口大に切る小松菜はざく切りにする
  4. 鍋にごま油を熱し、昆布・豆腐・小松菜以外の食材を入れて強火で炒める
  5. 火が通ってきたら、出汁を入れて沸かし、昆布・塩を加えてじっくり煮る
  6. 野菜が柔らかくなったらしょうゆを入れ、豆腐を手で崩しながら加えて4~5分煮、仕上げに小松菜を加え、火を通す

お好みで七味唐辛子を加えたり、柚子の皮を添えてどうぞ。

<ポイント>

今回は精進料理として、しいたけ・昆布で出汁を取りましたが、お好みに合わせてかつおと昆布の混合出汁で作っていただいても構いません。
野菜も、皮付きだと食べにくい場合はむいて下さい。
また具材も油揚げや鶏肉などコクの出るものを入れると、子どもも食べやすくなります。

【栄養】

今回は動物性の食材を使わずに作っていますが、畑の肉といわれる大豆から作られた豆腐をたっぷりと入れる事で、体づくりに必要なたんぱく質も補えます。
また根菜類をはじめ、きのこや海藻は食物繊維が豊富です。お通じを整える効果があるので、体の中からすっきり出来ます。
野菜にはビタミンやミネラルも豊富です。にんじんや小松菜には体内でビタミンA変わるβ-カロテンが含まれます。β-カロテンは油と一緒に摂ると効率良く吸収されるので、汁物に入れる場合も、今回のように炒めたり仕上げに香り付けのごま油を回し入れるなどするのがおすすめです。

いかがでしたか。
本来は修行の一環として修行僧の方々が食べていた精進料理ですが、試行錯誤を重ね、現在では一般の方にも幅広く浸透しています。
命をいただくという事に感謝しながら、ゆっくりと味わってみて下さい。