更新日:2024/12/25
料理と科学は接点が無いように思えますが、実は密接につながっています。今回は調理科学のなかから、プリンがかたまる仕組みについてご紹介します。
私たちは、おいしさを五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)や五感(視覚・嗅覚・触覚・味覚・聴覚)をフルに使って感じています。その際、おいしく感じるために重要なのは、食材に最適な調理方法や温度などを知ることです。調理科学とは「どうすれば美味しくなるか」を、科学的根拠に基づいて明らかにするものです。例えば、「葉野菜をゆでるときは沸騰したお湯に塩を入れる」という調理の基本がありますが、これも調理科学です。この場合の調理科学のポイントは2つで、「熱湯でゆでる」と「塩を入れる」です。葉野菜にはクロロフィルという色素が含まれていますが、熱に弱く、長時間の加熱は葉の色が悪くなります。熱湯を利用して高温短時間で火を通し、手早く冷やすと、葉の退色が少なくて済みます。熱湯でゆでることで葉の退色をおさえることが出来ますがそこに塩を加えると、葉に含まれるクロロフィルが安定するため、より鮮やかさを維持出来るのです。また塩を加えると、浸透圧によって葉がやわらかくゆで上がるという利点もあります。
それでは、今回のテーマであるプリンがかたまる仕組みについてご紹介します。
●答えがわかるかな?では早速、問題です。プリンの基本材料は、砂糖・牛乳・卵ですが、この中でプリンが固まるために最も重要な材料はどれでしょうか。答えは・・・
↓
卵です!!
●解説卵は、生のままだと液体に近い状態ですが、熱を加えるとかたまる性質があります。これは、卵に含まれるたんぱく質によるもので、「熱凝固」といいます。卵のたんぱく質はアミノ酸という物質が規則正しくたくさん繋がって出来ています。そこに熱が加わると、たんぱく質の繋がりが一度ほどけてバラバラになり・・・再び絡まりあうことでかたまりますが、最初とは違う構造になっているので、元には戻りません。
卵は卵黄と卵白で出来ていますが、実は卵黄と卵白ではかたまる温度帯が違います。それがよくわかるのはゆで卵でしょう。時間を変えてゆでた卵を切ってみると、時間が短い方が中の卵黄がトロッとしていますね。卵は、卵白の方がかたまり始める温度が低く58℃くらいからかたまり始め、80℃付近で完全にかたまります。一方で卵黄は、65℃くらいからかたまり始め、70℃付近で完全にかたまります。卵黄の方が完全にかたまる温度帯は低いですが、卵黄は卵白の中にあるので、熱が伝わるまでに時間がかかり、結果、外の白身がかたまっても中がまだトロッとした半熟卵が出来るのです。
プリンはその温度差をなくすために、卵を溶きほぐして使用することで、全体が同じ温度でかたまるようになります。かたまる温度帯は、そのときの加熱条件によっても異なるので、この温度!という明確な温度を示すことは出来ませんが、プリンの中心温度が75~80℃くらいになれば、プリンがかたまります。かたまったかどうかの目安は、容器の端を優しくゆすったときに、プリンの表面が均一に揺れるかどうかです。かたまっていないと、プリンの中心部分だけが波立つような状態になります。見にくい場合もあるので、しっかり観察してみてください。ちなみに、加熱時間が長いと、火が入り過ぎた「す」と呼ばれる空気の穴のようなものが出来てしまいますので気をつけましょう。
溶き卵にそのまま熱を加えても、プリンのようにはなりませんね。プリンがあの食感になるには、砂糖と牛乳が必要です。砂糖を加える理由はもちろん甘みをつけるということもありますが、それ以外に重要なのは砂糖の保水力。たんぱく質の隙間に砂糖の成分が入り込んで卵の水分を包み込むことで、ガチッとかたまるのを防ぎます。砂糖が多い方が、保水力が高まり、よりやわらかな仕上がりになります。さらに、牛乳で水分を増やすことで卵のたんぱく質濃度が薄くなるため、なめらかになります。水ではなく牛乳を使うのは、乳製品のコクがプリンによく合うからでしょう。牛乳は一部を生クリームに置き換えることも出来ますので、いろいろな分量で試してみるのもおすすめです。ちなみに、砂糖と牛乳は入れれば入れただけよいということではなく、限度があるので気をつけてください。
卵:牛乳=1:2くらいがおいしい食感になるので、卵1個に牛乳100~120mlを目安にし、砂糖は25~30gくらいをベースにすると甘さのバランスもよいでしょう。プリンを型から外したい場合はかため、容器に入れたまま食べる場合はやわらかめなど、好みに合わせたプリンを作ってください。蒸す・オーブンで焼く・湯を張ったオーブンで蒸し焼きにするなど加熱方法を変えると、同じ分量でもまた違った食感になります。好みで牛乳の一部を生クリームに変えたり、バニラビーンズなどで香りづけをしてみるとよいですね。カラメルを作ってかけると、カラメルの苦みがプラスされ、おいしいです。ちなみに、この砂糖を焦がして茶色くする技法も、メイラード反応という調理科学を取り入れたやり方で、うま味やこうばしさが味の幅を広げます。
いかがでしたか。難しそうに思えるかもしれないですが、実は私達は知らない間にこの調理科学に基づいた調理をやっているのです。ちょっとしたコツを知っているだけで、料理やお菓子がグッとおいしくなりますので、気になる方は調べてみてください。
Text by さゆり/食育インストラクター
料理と科学は接点が無いように思えますが、実は密接につながっています。
今回は調理科学のなかから、プリンがかたまる仕組みについてご紹介します。
【調理科学とは】
私たちは、おいしさを五味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)や五感(視覚・嗅覚・触覚・味覚・聴覚)をフルに使って感じています。
その際、おいしく感じるために重要なのは、食材に最適な調理方法や温度などを知ることです。
調理科学とは「どうすれば美味しくなるか」を、科学的根拠に基づいて明らかにするものです。
例えば、「葉野菜をゆでるときは沸騰したお湯に塩を入れる」という調理の基本がありますが、これも調理科学です。
この場合の調理科学のポイントは2つで、「熱湯でゆでる」と「塩を入れる」です。
葉野菜にはクロロフィルという色素が含まれていますが、熱に弱く、長時間の加熱は葉の色が悪くなります。
熱湯を利用して高温短時間で火を通し、手早く冷やすと、葉の退色が少なくて済みます。
熱湯でゆでることで葉の退色をおさえることが出来ますがそこに塩を加えると、葉に含まれるクロロフィルが安定するため、より鮮やかさを維持出来るのです。
また塩を加えると、浸透圧によって葉がやわらかくゆで上がるという利点もあります。
それでは、今回のテーマであるプリンがかたまる仕組みについてご紹介します。
【プリンがかたまる仕組み】
●答えがわかるかな?
では早速、問題です。
プリンの基本材料は、砂糖・牛乳・卵ですが、この中でプリンが固まるために最も重要な材料はどれでしょうか。
答えは・・・
↓
↓
卵です!!
●解説
卵は、生のままだと液体に近い状態ですが、熱を加えるとかたまる性質があります。
これは、卵に含まれるたんぱく質によるもので、「熱凝固」といいます。
卵のたんぱく質はアミノ酸という物質が規則正しくたくさん繋がって出来ています。
そこに熱が加わると、たんぱく質の繋がりが一度ほどけてバラバラになり・・・再び絡まりあうことでかたまりますが、最初とは違う構造になっているので、元には戻りません。
卵は卵黄と卵白で出来ていますが、実は卵黄と卵白ではかたまる温度帯が違います。
それがよくわかるのはゆで卵でしょう。
時間を変えてゆでた卵を切ってみると、時間が短い方が中の卵黄がトロッとしていますね。
卵は、卵白の方がかたまり始める温度が低く58℃くらいからかたまり始め、80℃付近で完全にかたまります。
一方で卵黄は、65℃くらいからかたまり始め、70℃付近で完全にかたまります。
卵黄の方が完全にかたまる温度帯は低いですが、卵黄は卵白の中にあるので、熱が伝わるまでに時間がかかり、結果、外の白身がかたまっても中がまだトロッとした半熟卵が出来るのです。
プリンはその温度差をなくすために、卵を溶きほぐして使用することで、全体が同じ温度でかたまるようになります。
かたまる温度帯は、そのときの加熱条件によっても異なるので、この温度!という明確な温度を示すことは出来ませんが、プリンの中心温度が75~80℃くらいになれば、プリンがかたまります。
かたまったかどうかの目安は、容器の端を優しくゆすったときに、プリンの表面が均一に揺れるかどうかです。
かたまっていないと、プリンの中心部分だけが波立つような状態になります。
見にくい場合もあるので、しっかり観察してみてください。
ちなみに、加熱時間が長いと、火が入り過ぎた「す」と呼ばれる空気の穴のようなものが出来てしまいますので気をつけましょう。
【プリンがカチカチにならない理由は?】
溶き卵にそのまま熱を加えても、プリンのようにはなりませんね。
プリンがあの食感になるには、砂糖と牛乳が必要です。
砂糖を加える理由はもちろん甘みをつけるということもありますが、それ以外に重要なのは砂糖の保水力。
たんぱく質の隙間に砂糖の成分が入り込んで卵の水分を包み込むことで、ガチッとかたまるのを防ぎます。
砂糖が多い方が、保水力が高まり、よりやわらかな仕上がりになります。
さらに、牛乳で水分を増やすことで卵のたんぱく質濃度が薄くなるため、なめらかになります。
水ではなく牛乳を使うのは、乳製品のコクがプリンによく合うからでしょう。
牛乳は一部を生クリームに置き換えることも出来ますので、いろいろな分量で試してみるのもおすすめです。
ちなみに、砂糖と牛乳は入れれば入れただけよいということではなく、限度があるので気をつけてください。
卵:牛乳=1:2くらいがおいしい食感になるので、卵1個に牛乳100~120mlを目安にし、砂糖は25~30gくらいをベースにすると甘さのバランスもよいでしょう。
プリンを型から外したい場合はかため、容器に入れたまま食べる場合はやわらかめなど、好みに合わせたプリンを作ってください。
蒸す・オーブンで焼く・湯を張ったオーブンで蒸し焼きにするなど加熱方法を変えると、同じ分量でもまた違った食感になります。
好みで牛乳の一部を生クリームに変えたり、バニラビーンズなどで香りづけをしてみるとよいですね。
カラメルを作ってかけると、カラメルの苦みがプラスされ、おいしいです。
ちなみに、この砂糖を焦がして茶色くする技法も、メイラード反応という調理科学を取り入れたやり方で、うま味やこうばしさが味の幅を広げます。
いかがでしたか。
難しそうに思えるかもしれないですが、実は私達は知らない間にこの調理科学に基づいた調理をやっているのです。
ちょっとしたコツを知っているだけで、料理やお菓子がグッとおいしくなりますので、気になる方は調べてみてください。
Text by さゆり/食育インストラクター